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はじめに

はじめに
糖尿病は生活習慣の変化とともに増加し続けている疾患のひとつであり、現代の生活において避けて通れない重大な健康問題の一つです。

当院では、糖尿病を抱える患者さんに対して単なるお薬での治療だけでなく、食事・運動療法を含めた総合的な生活支援を含めてお一人おひとりの生活の質が向上することを目標に伴走します。


なお、2023年9月より日本糖尿病学会・日本糖尿病協会は「糖尿病」の新しい呼称として「ダイアベティス」という言葉を提唱しています。
しかし現時点ではまだ充分に認知されていないと当クリニックでは考えており、伝わりやすさを重視してこれまで通り「糖尿病」の呼称を使用します。






糖尿病とは(糖尿病の原因と診断基準)

糖尿病の原因と判断基準
糖尿病はひと言でいうと「血液の中に余分な糖があふれてしまう状態」のことです。

口から入った糖は主に小腸から血管内=血液へ吸収され、血流に乗って全身へ行き渡る中で体内で分泌されたインスリンの作用で血管外の細胞へ取り込まれます。

そこでインスリンの量や効きが足りないと、余分な糖が血中に残ってしまうため血管や体の臓器・機能を損ねていきます。


エバさん

糖尿病っていつからあるんですか?

院長

古代エジプト時代の医学書のパピルスに「大量の尿を出す病気」についての記載があり、最古の糖尿病の記録とされています。他にも古代インド、古代中国にも似たような記録が残っていて、古代ギリシアのアレテウス医師が「まるで水道の蛇口を開いたように絶え間なく尿があふれ出す」という意味でDiabetesという病名を付けていました。
(冒頭の「ダイアベティス」はこの言葉が起源になっています)

エバさん

最初は「たくさん尿が出る病気」だったのね。そこからどうして糖尿病という名前になったのでしょう?

院長

17世紀のイギリスのトーマス・ウィリス医師がDiabetes患者さんの尿が「蜂蜜のように甘い」ことに気付き、「甘い」という意味のmellitusという語が付け加えられて病名がDiabetes mellitusとなりました。この日本語訳が「糖尿病」です。

エバさん

「尿」が「甘い」から「糖尿」かぁ。これで尿がそんなにたくさん出るのも不思議だけど、病気っていうことはやっぱり身体によくないですよね?

院長

19世紀になると点滴で水分を補えるようになり、尿がたくさん出ても脱水症になる危険は減っていきました。ところが尿が甘くなる原因だった「血液中の糖分が多い=高血糖」がむしろ問題で、身体の色々な働きを悪くしてしまうだけでなく、全身の血管が硬く細くなることで血液が行き渡らなくなってしまうことが分かってきました。「糖尿病」という病名が病気の内容を正しく反映していないので、最近では病気の呼び名を変えた方がいいのではないかという考えも出てきています。

エバさん

ただ「血糖値が高い」っていう検査値が異常ということだけじゃないんですね。


糖尿病の種類と特徴

糖尿病の種類と特徴
糖尿病は「1型糖尿病」「2型糖尿病」「妊娠糖尿病」の3つの種類があります。それぞれ原因や管理方法が異なるため、正確な診断と適切な治療が重要です。

1型糖尿病

「1型糖尿病」では、免疫の異常により体内でインスリンを作る膵臓の細胞が破壊されてしまいます。そのため、体内のインスリン量がほとんどまたは全くなくなってしまい、身体の外からインスリンを注射して補っていく必要が出てきます。

2型糖尿病

「2型糖尿病」は現代社会において圧倒的に多いタイプです。こちらは遺伝的な要素とともに肥満や運動不足、偏った食生活などの生活習慣が大きく関係しています。
具体的な2型糖尿病の原因や背景は以下のようなものがあげられます。
  • 肥満:内臓脂肪が増えてインスリンが効きにくくなる
  • 運動不足:身体活動が減ることでエネルギー消費量が少なくなる
  • 偏った食生活:糖質・脂質主体の食品を摂る機会が増える
  • 加齢:年齢を重ねるとともにインスリンの働きが低下していく
体内のインスリンは十分な量が分泌されていても、身体の中でインスリンが効きにくい状態になってしまうと血糖値が高くなります。
また、一般的に日本人は遺伝的にインスリン分泌量が少ないことが多いため、比較的糖尿病になりやすい民族と言われています。

妊娠糖尿病

「妊娠糖尿病」は妊娠中に血糖値が高くなる状態で、ホルモンバランスの変化によってインスリンが効きにくくなり、血糖値が高くなります。
出産後にはホルモンバランスと同様に元に戻ることが多いですが、そのまま2型糖尿病に移行する場合もあり、体重や食生活への注意が必要です。

糖尿病の初期症状と診断

糖尿病の初期症状と診断
多くの場合、糖尿病の初期症状には特徴的なものがありません(進行すると口が渇く、水をたくさん飲む、尿量が増えるといった症状が出てきます)。そのためご自身で気付くことは難しく、健康診断や別件での血液検査で発見される場合がほとんどです。糖尿病の診断は、主に血糖値とHbA1c(「ヘモグロビン エーワンシー」と読みます)値(過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映します)を測定することによって確定します。

■糖尿病の診断基準
  • 空腹時血糖:126mg/dL以上
  • 75gOGTT 2時間後血糖値:200mg/dL以上
  • 随時血糖値:200mg/dL以上
  • HbA1c:6.5%以上

これらの基準のうち、いずれかの基準1つでも当てはまれば「糖尿病型」と判断されます。
さらにHbA1cが6.5%以上の場合、または1ヶ月以内の再検査で再度いずれかの基準を満たすか、上記の症状がある、もしくは目(網膜)に特徴的な変化があれば「糖尿病」と診断されます。

ただし、HbA1cのみの測定では「糖尿病型」または「糖尿病の疑い」しか判断できず、診断には必ず血糖値の確認が必要です。

健診などで「『HbA1cが高いので糖尿病です』と言われた」という話がよく聞かれますが、もし血糖値を測られていない場合は診断基準を満たしていないため、医学的には正確な表現とは言えません(ただし、HbA1cの上昇具合によっては「実質的にほぼ糖尿病と考えられる」場合もあります)。


エバさん

血糖値が高かったら、もうそれで糖尿病ということになるんですか?

院長

いいえ、そうではありませんよ。検査の前に食べたり飲んだりすれば血糖値はある程度高くなるものですし、その範囲内ならインスリンなどの作用でちゃんと血液中に糖が余らないよう処理できます。ただし、一定の数値以上に高くなるようなら、それは身体が処理できる以上の血糖が溜まっているということになるので、糖尿病の可能性が高いといえるでしょう。

エバさん

糖尿病ってみんな同じなんですか?

院長

「血液中の糖分を身体が十分にさばき切れず、余らせてしまっている」という状態は同じですが、血糖値を下げるインスリンというホルモンに関わる状況によって大きく2種類に分けられます(妊娠糖尿病については2型糖尿病に類似したものとして省略します)。
分かりやすくするために、ざっくりと「血糖=荷物」「インスリン=配達員さん」に例えますね。
ひとつは「インスリンの出る量が少なくなってしまう」というタイプで、「荷物」を運ぶはずの「配達員さん」の数が足りない状況です。もともと日本人はインスリンの量が少ないうえ、「自分の免疫が暴走して自分の細胞を攻撃してしまう (=自己免疫性)」事態になることで、「配達員さん」が減っていってしまいます。進行するとついにはいなくなってしまうので、身体の外から他所の「配達員さん」を派遣してもらう=インスリンを注射して補うということを続けないと、荷物を運べなくなってしまいます。
もうひとつは「インスリンの効きが悪くなってしまう」というタイプで、「配達員さん」の通り道に障害物がたくさん出てきてしまってる状況です。なんとか通り抜けて「荷物」を届けてはくれるのですが、どうしても時間がかかってしまう。そのため体重を減らしたり運動したりすることで障害物を減らしたり、インスリンが長持ちしてくれるような薬を使ったりすることが治療になります。
いずれにせよ、状況が悪くなると血糖値が高い時間が長くなってしまいます。しばらくは目立った症状こそないかもしれませんが、こういった状態が続くと血管や神経が痛んできて様々な合併症を引き起こす可能性があるんです。




糖尿病を放置した場合のリスクと合併症

糖尿病の合併症には、以下のようなものがあります。

■糖尿病の合併症の代表例とリスク
  • 網膜症:視力が下がり失明になることも、年に1回は眼科を受診しましょう!
  • 腎症:腎臓の機能が低下して体内のクリーニングができなくなります
  • 神経障害:手足がジンジン痺れたり、感覚が薄れたりします(怪我に気付きにくい!)
  • 心血管疾患:動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳卒中のリスクがぐっと高くなります
  • 難治性潰瘍:傷が治りにくくなります
  • 感染症:免疫力が低下し、感染症が重症化しやすくなります

これらの合併症は気づかないうちに進行してしまうことも多いです。
そのため、糖尿病と診断された、または健康診断で血糖値を指摘されたなどの場合は、早期に血糖コントロールを始めて、合併症の予防や悪化を防ぐことが重要です。



糖尿病の治療・向き合い方


食事療法:糖質・カロリー控えめ、野菜多めでバランスのとれた食事計画

食事療法
体内のインスリン分泌量=糖の処理能力は生まれつき決まっているため、他の方法で血糖値を上げ過ぎないようにする必要があります。

具体的な方法としては、以下の2つです。
  • 摂取カロリー量を抑える
  • 消費カロリー量を増やす
これらのうち、まず前者の「摂取カロリー量を抑える」から取り組んでいただくことをお勧めしています。後者は平たく言うと「運動しましょう」ということですが、実際に消費カロリー量を増やそうとすると相当な量の運動が必要で、しかもこれらは続けていかないといけません(止めると元に戻ってしまいます)。また、医学的には「食べ過ぎた分を運動でリセットする」のには限界があると言われており、「最初からカロリーを摂り過ぎない」方が動脈硬化の予防に有利です。

ここで「摂取カロリー量を抑える」に当たってのポイントは「今のカロリー摂取量を踏まえた上で」考える点です。年齢と共に身体の活動量は下がりやすい=カロリー消費量は減りやすい中で「昔と同じように食べている」と、結果的に相対的なカロリー摂取量は増えてしまっているという状態になりかねません。


エバさん

う~ん、でもカロリー計算って難しそう…。

院長

そうですね。カロリーの摂取量も消費量も、正確に測っていくというのははっきり言って現実的でないと思います。とはいっても、お店で買ったり食べたりするものにはカロリー量が表示されている場合も多いので、意識して「カロリー量がより少ないものを選ぶ」だけでも違ってくるでしょう。また日々の暮らしの中で数値化できるものとして、やっぱり「体重」を気にしておくのがいいでしょうね。

エバさん

うぅ…使いやすいように体重計を出しておくことにします…。


■糖尿病の食事療法:具体例
  • 糖質管理:糖質の摂取量を意識してコントロールし、血糖値の急上昇を防ぐ(「食べない」ではなく「メリハリをつける」ことです)
  • 食物繊維の摂取:野菜、きのこ、海藻などの食物繊維を摂る
  • 脂質の制限:揚げ物や菓子類は控え、低脂肪の食事を心掛ける(糖質・たんぱく質とは同じグラム数でカロリー量が倍以上異なります。)
  • 規則正しい食事時間:1日3食、一定の時間を守ること(インスリンの分泌=配達員さんの出動も安定します)

院長

こういった内容をご自身ができるものから取り組んでいただきつつ、定期的に血液検査や診察でフィードバックを受けて調整していくのがいいでしょう。

エバさん

たしかに、専門家の人からアドバイスをもらうことは大切ですね。食事の専門家で栄養士さんという方も聞きますが、えばらクリニックにはいらっしゃるんですか?

院長

えばらクリニックに常時いらっしゃるわけではありませんが、管理栄養士さんの団体と提携しています。オンラインでの栄養相談なので、自宅などで受けていただくこともできますよ(初回のみご受診をお願いしています)。


運動療法:できることから、ちょっとずつ

運動療法
医学的な「運動」というのは「中等度の負荷(例:話しながらではちょっときついくらいのペースで歩く)30分を週に5回」というのが古典的な定義ですが、これを始めてずっと続けるというのはなかなかに大変かと思います。私たちはまず取っ掛かりとして「日常の生活に組み入れられる簡単なものを少し」から始めることをお勧めしています。

例えば…
  • いつもの通勤の道を「ちょっとだけ」回り道する
  • エスカレーターに乗るのを「行きだけでも」階段を使う
  • 「1つ」手前のバス停で降りて歩く
  • 「ほんの少し」遠い駐車スペースに車を停める
など、「無理し過ぎない、嫌にならない」程度でまず始めること、そしてそれを「続ける」ことが大切です。
タイミングや時間帯も統一すると習慣化しやすくなります。まずは習慣化する一つの目安と言われている「2か月間」頑張ってみましょう。



おわりに

おわりに
糖尿病は「治す」ことは難しくても「自分でコントロールできる部分が大きな病気」だと思います。

岡山市北区の内科えばらクリニックでは、患者さん自身がご自分のお身体のことに向き合い、健康管理を通じて日常生活を充実させるためのサポートを全力で行っています。「やりたいことをやれるように、健康面の問題解決をお手伝いする」というのが私たちのスタンスです。

どんな小さな不安や疑問でも構いません。お気軽にご相談ください。私たちと一緒に、「糖尿病と一緒に生きていく暮らし」を始めましょう。